建築計画に伴う近隣紛争の解決に向けて
ページID K1000449 更新日 平成21年8月11日 印刷
建築計画に伴う近隣紛争の解決に向けて
はじめに
集合住宅や中高層の建物が周辺に計画されると、周辺住民等の方から、日当たりの問題、工事中や工事後の問題、プライバシーの問題などが気にかかるといった相談が多く寄せられます。一方、建築主は、土地の有効利用という観点から、法令に適合する建物を思いどおり建てたいという考えがあるのも事実です。
こうした周辺住民の方と建築主には利害関係の違いから建築紛争へ発展するケースが少なからず見受けられます。
このような時、どのように解決していけばよいか、周辺住民の方と建築主の関係、そして市の役割や法的な扱いについて、さまざまな事例を紹介しながら下記にまとめました。
注記:周辺住民等とは、浦安市宅地開発事業等に関する条例の中で、近隣説明の対象者を周辺住民等と定義しています。具体的には、以下の項目に該当する方をさします。
- 開発地に接する土地(開発地に接する土地が道路であるときは、当該道路(開発地に接する部分に限る)と開発地の反対側において接する土地を含む)に居住する者および土地または建築物を所有する者
- 冬至において中高層建築物等により、午前9時から午後3時までの間に日影を生ずる範囲内に居住する者および土地または建築物を所有する者
- 中高層建築物等の敷地境界から建築物の高さの距離内に居住する者および土地または建築物を所有する者
- 中高層建築物等によるテレビジョン放送の電波障害の影響を著しく受けると認められる者
注記:条例で定める中高層建築物等とは、特定の地域における3階建て以上の建築物や高さが10メートルを超える建築物などを指します。建築物が中高層建築物等に該当するかは、都市計画課開発指導係へお問い合わせください。
公法とは
建物に関する代表的な法律として建築基準法や都市計画法が挙げられます。これらの法律による規制は公法上の規制といわれ、誰もが守らなければならないものです。
(これらの法律に基づいて直接個人の権利保護を主張できるというものではありません。)
公法上の主な規制の内容
・ 建物の用途に関する規制
・ 建物の規模(面積)に関する規制(建ぺい率、容積率)
・ 建物の高さに関する規制
・ 建物が敷地の外に出す日影に関する規制(日影規制)
・ 建物の強度に関する規制(地震、台風などに対する安全性)
・ 火災に対する安全性に関する規制
・ 災害時の避難に関する規制 など
私法とは
事業者と周辺住民等の方との間で、周辺住民等の方には良好な環境を守りたいという思いがあり、その一方で事業者には土地を有効利用する権利があります。
両者の主張する権利調整の結果、建物に対する制限として決まるのが私法上の制限です。私法の代表例としては、民法が挙げられます。
私法上の問題は、当事者である両者の間で解決すべきもので、行政には解決する手段が与えられていません。建築確認申請においても私法関係は審査の範囲ではありません。当事者間で解決できない場合は最終的に司法に訴えることにより判断が下されることになります。
浦安市宅地開発事業等に関する条例
浦安市では、ある一定規模以上の建築物を建築する際には、駐車場や緑地などの整備基準を設け指導しています。これらの基準は、建築基準法や都市計画法に定めのないものですが、秩序あるまちづくりに必要なものであるとの考えから条例により義務付けているものです。
また同時に、条例で定める周辺住民等への説明を義務付けています。 これは建築物が建築される前に事業者が周辺住民等の方に説明することで、その後の紛争を未然に防ぐ機会を作り、両者の間で問題が発生した際には話し合いを続けて解決へつなげていくためのものです。建物に公法上問題がなければ、この両者の話し合いなどのやり取りは、私法上の問題となるため、行政が介入することはできません。
周辺住民等への説明でのポイント(周辺住民向け)
説明を受ける際には、どのような事業計画であるかの把握に努めてください。その上で、疑問や不安に思う点があれば詳しい説明を求め、また、事業者に対する意見や要望があれば、口頭で伝えるか又は書面で提出するなどにより、意見交換を通してお互いの立場を尊重しながら、考え方や意見を調整していきましょう。
また、必要があれば説明会の開催を要望することができます。
話し合いにより合意した場合は、覚書や協定書などの書面で合意事項を取り交わすことも選択肢です。将来的に「言った」「言っていない」というトラブルを回避することができます。
周辺住民等への説明でのポイント(事業者向け)
説明を行う際には、周辺住民等の方々が建築基準法などの関係法令に詳しいわけではないことを踏まえて説明を行ってください。
事業者の責務として、わかりやすく説明することを基本とし、良好な近隣関係を損なわないよう努めてください。
また、周辺住民等から説明会の開催要望があった際には、場所や日時に配慮して開催してください。
建築物の建築に伴う私法上の問題事例
日影
建築基準法では、「日影規制(建築基準法第56条の2 日影による中高層の建築物の高さの制限)」を設け、用途地域に応じて中高層の建築物が周囲に生じさせる日影を一定時間内に抑える制限をしています。
これは公法上の規制ですが、これを守っているからといって満足する日照が得られるとは限りません。
よく「日照権」という言葉を耳にします。「日照権」という権利は民法その他で定めはありませんが、裁判ではお互いに我慢しあう限度(受忍限度)を超えていると判断されるケースもあります。判例によると、受忍限度の判断要素としては、一般的に(1)日照侵害の程度(2)建築基準法違反の有無(3)地域性(4)加害回避の可能性(5)被害回避の可能性(6)交渉経過、などを総合的に考慮する、としています。
建築物による日照の阻害については、事業者に日影図の提出を求め、計画されている建築物によりどのくらいの時間日影になるかを把握し、事業者と改善方法についてよく話し合ってください。
プライバシー
建築基準法などではプライバシー保護に関する建物の規制はありませんが、民法では、境界線から1m未満の距離において他人の宅地を眺めることができる窓や縁側を設ける場合は、目隠しを設けなければならないことになっています。ただし、これは私法上の制限ですので、お互いに問題としない場合には必ずしもこれに従わなくてもよく、また、異なる慣習がある場合はその慣習が優先されることになっています。なお、建物のプライバシー対策は、日常的に、何気なく見えてしまうというという状態への対応で、意識的に覗こうとする者の視線を遮るところまで要求するのは困難と思われます。
対策として、目隠しパネルを設置する、窓ガラスを曇りガラスにする、窓の位置をずらすなどがあります。ただし、建築基準法や消防法により、目隠しパネルを設置できない場合もあります。実際の解決には、当事者間の話し合いによる解決が大切であり、事業者、周辺住民ともに対策をとるなどお互いに歩み寄ることも必要です。なお、建物完成時に立ち会い、目隠しの場所を決めることもあるようです。
圧迫感
民法では、建物の位置は境界線から50cm以上離さなければならないことになっています。ただし、これも私法上の制限ですので、お互いに問題としない場合には必ずしもこれに従わなくてもよいことになります。
また、防火地域や準防火地域では、耐火構造の外壁であれば境界線に接して建てられるなど、一般的には建築基準法の規定が優先されると考えられます。圧迫感を緩和する対策としては、建物の離隔の変更や、植栽の設置などが挙げられます。
電波障害
一般的に電波障害(特にテレビ電波)が発生したときには、原因者の負担で原状に回復すべきものと考えられています。
10mを超える建築物については、「浦安市中高層建築物等によるテレビ電波障害の防止に関する指導要綱」で、事業者はテレビ電波障害の発生が予想される地域について、あらかじめ調査を行い、その防止対策について検討を行うことや、近隣関係住民と協議し、速やかにテレビ電波障害の防止対策を講じなければならないことが定められています。この場合、事業者に調査結果の説明を求め、障害が発生した場合の対策を話し合っておくことがよいでしょう。
眺望の阻害
事業者にはその土地を有効に利用する権利があることから、市街地では、住居からの眺望の確保を理由として、法的に保護を求めることは難しいようです。眺望の考え方は日照権の考え方と基本的には同じですが、日照の問題と比較すると、受忍限度の差が大きいため、その権利が認められることは難しいと考えられます。
工事中の騒音・振動
建築工事にともなう騒音・振動に関する法的な規制として、くい打ちなど特定の作業は、騒音規制法、振動規制法、浦安市環境保全条例で規制対象となっていますが、通常の作業には法の規制がありません。
このため、工事の規模や周辺の状況等により騒音・振動の影響が大きいと思われる場合は、作業日時や方法、工事用車両の通行時間帯や安全策などを工事協定書として締結しておくと良いでしょう。また、工事箇所と家屋が近接しているときは、万一の建物被害に備え、工事後との比較が明確にできるよう、工事前の建物の状態を写真等により記録させ(“家屋調査”と言います)、被害が発生したときの補修や損害賠償についても工事協定書に取り決めておくことがよいでしょう。
工事の期間は近隣の方々は迷惑を受けることになります。誰でも家を建てるときには周囲に迷惑をかけることになりますのでお互い様ともいえますが、できるだけ迷惑が少なくなるよう配慮を求めたいものです。
近隣紛争の主な相談窓口
浦安市が設置しているもの
<弁護士相談>
市では一般的な相談窓口として、弁護士による法律相談(予約制)を設けています。
相談日等の詳細は、広聴広報課へお問い合わせください。
なお、一定規模以上の建築行為(中高層建築物)が対象の場合、都市計画課が所管する弁護士相談制度(建築紛争相談員制度)を利用することも可能です。
制度を利用可能かについては、都市計画課開発指導係(047-712-6543)にご相談ください。
<浦安市中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例(中高層紛争予防条例)に基づくあっせん・調停>
事業者との間で相隣問題の話し合いを行ったにもかかわらず、その解決が困難となった場合、計画されている建築物が中高層紛争予防条例に定める中高層建築物にあたる場合には、中高層紛争予防条例に定める近隣住民等は、市長に紛争の調整の申出を行うことができる制度を定めています。
また、当事者間での自主的な話し合いによる解決が困難となった場合に、市は、「あっせん」「調停」という紛争の調整を図る制度を設けております。
・あっせん
原則として、紛争当事者双方からの申出があった場合に、市が話し合いの場を設け、紛争の解決を図ろうとするものです。
・調停
「あっせん」が打ち切られた場合において、必要があると認めるときは、法律や建築の専門家で構成する浦安市建築紛争調停委員会を開き、その意見をもとに紛争の解決を図ろうとするものです。
注記:あっせんや調停は、日影やプライバシー、安全面など生活環境に関する問題について取り扱うものであり、資産価値や金銭的な補償等の問題について取り扱うことができません。また、強制力が伴うものではないことから、当事者間での最終的な決着を望む場合については、司法の場に委ねる問題となります。
その他
<民事調停について>
調停は、簡易裁判所及び地方裁判所で取り扱っている制度で、裁判官と民間から選ばれた2名の民事調停員とで構成する調停委員会が行います。当事者同士の合意によって紛争の解決を図ることを目的とするもので、調停が成立した場合には、その内容を調書に記載することで裁判上の和解と同一の効力を有します。また、訴訟に比べ費用も安く利用できます。
FAQ
- 近隣住民の日照を阻害するような建物は建てられるのですか?
- 「日影規制」に適合しても、日照を阻害することに変わりがないのでは?
- 周辺住民等が反対する建築計画を、市が許可する理由は?
- 周辺住民等への説明はどのように行われますか?
- 周辺住民等が同意するまで、建築確認をストップできないですか?
- 説明会は開催されないのですか?
- 用途地域が第一種住居地域に指定されている土地ですが、近隣に3階建てマンションを建築する計画の案内が届きました。周辺には2階建ての建物がほとんどで、高い建物は建てることができない地域なのではないですか?
問い合わせ先
都市計画課開発指導係(047-712-6543)
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このページに関するお問い合わせ
都市計画課
〒279-8501 千葉県浦安市猫実一丁目1番1号(市役所6階)
電話:047-712-6542
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